Backstage vol.2_みんぱくイベントリハーサル「口承文芸から現代史、そしてヒップホップへ」

初日のみんぱくからホテルへ戻る途中で夕食へ。「何が食べたい?」と皆さんに聞いても「わからない」「決めて」と言われるばかり。「肉はどう?」と聞いたら「ナイス」ということでステーキ屋さんへ行きました。島村先生とオギーは別の用事があり、この4人で。左から俳優・歌手・演出家のソソルバラムさん、私、ラッパーのGennie、DESANTです。

若手のラッパー2人と大御所のソソルバラムさんがちゃんと会話をしたのは、このときが初めてだったと思います。音楽のジャンルも年代も違うためか、彼らはモンゴルにて仕事で関わることはなかったようで、これこそ今回のイベントの醍醐味の一つだと思いました。

「ソソルバラムさんはヒップホップに関わられることがありますか?」と私が尋ねたら、「私はチョイノムの詩を朗読するでしょう。チョイノムの詩はまさにヒップホップだと思う」とおっしゃっていました(このときは話題に出ませんでしたが、実際にはソソルさんは過去にラッパーとコラボされているそうです)。

ソソルさんが朗読するチョイノムの詩。美しいですね。

「反逆の詩人」と呼ばれるレンチニー・チョイノム(1936-1979)は、モンゴルが社会主義だった時代に体制批判の詩を書いたことで逮捕・投獄され、民主化後に再評価されたのだそうです。島村一平先生の『ヒップホップ・モンゴリア』の中にも出てきますが、モンゴルのヒップホップシーンとかなり深い縁のある人物です。

翌日再びみんぱくへ。

みんぱくの吉田憲司館長にご挨拶。吉田館長の後ろの壁に、お面の絵柄の日本てぬぐいが飾られていました。文化人類学者である吉田館長のご専門がアフリカ地域のお面や儀礼なのだそうです。

館長との会食後、みんぱくのノートにサインを残すソソルバラムさん。

Gennieは長いメッセージを書いていました。

いよいよ、パフォーマンスが行われるホールへ移動。

アーティストたちのリハーサルが始まりました。

Gennieは来日前に新曲を3つも作ってきていました。島村先生が「Gennieの新曲すごくいい」と事前におっしゃっていたので私も期待していたのですが、めちゃくちゃ良い!です。

DESANTのパフォーマンス。思わず最前列まで行って踊らずにいられない。舞台を飲みこんで彼の世界にしてしまうパワーがありました。

歌い上げるソソルさん。ものすごい声量で、生歌が心に響いてきて感動しました。ソソルさんは照明の角度や強さについて、最後まで念入りにチェックなさっていました。

DESANTのリハ中にソソルバラムさんが突然立ち上がり、「DESANT! 登場の仕方はこうしたらどう?」と意見を述べる場面もあり緊張感が。日本の皆さんにどのようなステージを見せるのか、プロフェッショナルな3人それぞれの気合が伝わってきてゾクゾクしました。

別の仕事を終え、大阪へ駆けつけられたモンゴル語通訳者の大束亮さんがこの日から合流。大束さんはモンゴルと日本のトップ外交の場をはじめ、さまざまなフォーラムやイベントなどで通訳のお仕事をされています。先日行われた元横綱白鵬関の断髪式でも活躍されていました。モンゴルに関わる日本人からも日本に関わるモンゴル人からも絶大な信頼を寄せられている方です。

昨年刊行されたオムニバスの書籍では冒頭の章「モンゴル国の政治情勢」を大束さんが執筆担当されており、現代モンゴル政治の状況がわかりやすく書かれていてとても勉強になりました。

 

リハーサルも終盤。対談のセッティングを確認し、バミリ。

リハの後、DESANTとGennieの取材が始まりました。インタビュアーはフォトグラファーの田中敦子さん。エミネムやカニエ・ウエスト、ビヨンセやオノ・ヨーコなど、世界的なスーパースターを撮影されてきた方です。

写真家と被写体、ふたりの世界。

後日DESANTと話していたとき、「そういえばあのインタビューの最後に興味深い質問をされたんだよ。『あなたにとってヒップホップとは何ですか?』って。それで俺は『ヒップホップはゲーム』って答えたんだ」と言いながらニヤリと笑っていました。

その記事が公開されています。

ヒップホップというゲームを生きる、第2世代モンゴリアン・ラッパーの王者(DESANT)

モンゴル初の女性ラッパーが培った経験と、見据えるシーンの今(Gennie)

Backstage vol.3_みんぱくイベント本番!「口承文芸から現代史、そしてヒップホップへ」