ラッパー「1A」はマンホールチルドレンだった

モンゴルに来てからさまざまな新たな出会いがあります。昨日は友人たちと草原の遊牧民のゲルへ行ったのですが、そのメンバーの中に「1A」というラッパー&プロデューサーがいました。若い世代に支持され、これからもっと人気が出ていくであろう気鋭の存在だそうです。1Aという名前の意味は「One Asia(ワン アジア)」。

こちらが1Aのミュージックビデオ。ウランバートルに最近できた「ミシェール」で撮影しています。

その遊牧民の家でお酒の話題になったとき、1Aが「自分は10年前から音楽をやっていて、喉のために酒もタバコもやらないんだ」と言いました。いわゆる「ラッパー」のイメージとのギャップに私は意外性を感じたのですが、その夜、別の理由を知ることに。

私たちは草原から街に戻ったあと、ミシェールへ行って打ち上げをしました。そのとき、1Aから話を聞く機会がありました。

彼はフブスグル県の出身で、10歳のときに家庭の問題でウランバートルへやって来て、マンホールチルドレンになったそうです。

「マンホールの中は暖かいから、凍えないで生きることができるんだよ。他にもこどもの仲間がたくさんいて、俺は4年間マンホールの中で暮らしていたんだ」

一部のマンホールチルドレンはギャングとの繋がりもあり、酒やタバコに手を出す子もいました。実際1Aがどんな暮らしをしていたのかはまだ詳しく聞いていませんが、当時の経験があるので、今は1人のときは酒やタバコをやりたいと思わないのだそうです。

「マンホールチルドレンだったときは、心の中にあるたくさんの思いを自由に言えなかった。でも成長してヒップホップに出会い、歌で表現することができるようになったんだ」

現在の1Aは、自身が書いた歌をラッパーとして歌いながら、若手のアーティストを育てるプロデュース活動に力を入れています。

彼のテーマは「ジャスティス(正義)」。ラッパーになる前は学校でジャーナリズムを専攻していたそうですが、その後彼はヒップホップという表現手段を手に入れました。

大きな熱い何かを内に秘めた1Aに、ぜひ改めてインタビューをしてみたいと思っています。