「仕事がないから海外で働きたい」と願うモンゴルの若者たち

仕事で来日したモンゴル人の女友達と東京で会いました。日本語を話せる彼女は、これまで日本の大手を含む複数の有名企業でバリバリ働いてきた3児の母です。その彼女がこんなことを言いました。

「実は今悩んでることがあるんだ。来年海外に移住するか、モンゴルに残るか?」

今彼女はモンゴルの会社で働いているのですが、「このままモンゴルにいても給与は上がらない。それなのに物価は高くなるばかりで、未来に希望が持てない」とのこと。

現在小学生であるお子さんの将来についても不安があるそうです。「うちの子が通う学校に、モンスターペアレントのお母さんが何人もいて大変なの。学芸会の演劇で『なぜうちの子が主役じゃないの!?』と先生に詰め寄って、よく揉めている」。

海外移住については彼女のご主人も大賛成らしく、先週ウランバートル市で開催された「オーストラリア移住フェア」の説明会に参加したそうです。夫婦とも英語を話せませんが、「移住することになったら英語を勉強するから心配はない。英語を覚えるまでは、掃除も皿洗いもどんな仕事でもやる」。

彼女はウランバートル中心部のマンションを借りて住んでいて、家族も仲良く、定職もあり、一見とても人生が順調そうです。しかしモンゴルを出ることを真剣に考えていたとは驚きました。

私はこの夏モンゴルで多くの若者たちと会って話したのですが、彼らからも海外への出稼ぎについてよく相談されました。たとえば、

最近軍隊を辞めたばかりの青年(20代半ば):

「物価が上がり続けているけれど、給料は上がる見込みがない。未来に希望が持てないから、軍隊の職を最近辞めたんだ。今はウランバートルのゲル地区にいる親戚宅に居候しながら白タクの運転手をしていて、日本で技能実習生になるか、韓国へ出稼ぎに行くか、選択肢はそのどちらかだと考えてる」

ゲル地区在住のアルバイト青年(20代前半):

「僕はモンゴル国立大学を卒業したけれど、今はショッピングモールで接客のアルバイトをしている。学歴があってもなかなか正社員の仕事が見つからなくて、海外へ出稼ぎに行きたいと思ってる。どこの国がいいと思う?」(彼はゲル地区にある実家から、バスを乗り継ぎ毎日1時間半かけてウランバートル市内のバイト先まで通っている)

また、すでに北欧へ移住している身内を頼って自分も昨年移住したばかりの青年とテレビ電話をしたら、次のように言っていました。

北欧へ出稼ぎに行っている青年(20代半ば):

「こっちの日本食レストランでウエイターのバイトをしていて、仕事は順調だよ。モンゴルに10代の弟がいるんだけど、来年彼をこっちに呼んで一緒に暮らそうと思ってるんだ。こっちの方が仕事があるから」

……というように、モンゴルを諦め海外移住しようとする若者に最近頻繁に会います。たまたまなのでしょうか?

良いチャンスを見つけたら躊躇せずそちらへ挑むフットワークの軽さはモンゴル人の特性の一つだと思います。しかし優秀な若者が海外へどんどん流出していくことは、国の将来にとって大きな損失ですよね。彼らが自分の将来について真剣に考えて決めたことなので、個人的には彼らの選択を応援したいですが、こういう思いを抱えた若者が増えていくことは国の将来にとって危険でもあると思います。

「モンゴルに良い暮らしを!」「政治家は仕事をしろ!」ウランバートルの広場で若者の抗議デモが白熱