モンゴルの新聞にインタビューが掲載されました

7月28日、モンゴルの新聞「ウドゥリーン ソニン」にインタビューしていただきました。私が日本モンゴル映画祭について話したものです。和訳を以下に書きます。

映画を通して、モンゴルという存在を全く新しい視点から見る

先日、東京都の新宿ならびに阿佐ヶ谷、神奈川県の横浜、大阪府の十三において、「第2回日本モンゴル映画祭」が開催された。4つの劇場で数日間にわたり、モンゴル映画7本が日本の観客に披露された。

実は一部の日本人にとってモンゴルという国は、近くにありながら遠く離れた場所にあるように感じられている。日本で得られるモンゴルの情報も非常に少ないというのが現実だ。

この映画祭は昨年から始まり、東京を含む4か所で上映され、モンゴル映画の祭典として日本の観客や映画愛好家、映画関係者の大きな関心を集めた。昨年は、モンゴルを代表して以下の作品がラインナップに並んだ。

  • 『ハーヴェスト・ムーン(Эргэж ирэхгүй Намар)』(B.アムラー監督)
  • 『冬眠さえできれば(Баавгай болохсон)』(P.ゾルジャルガル監督)
  • 『シティ・オブ・ウインド(Сэр сэр салхи)』(P.ルハグワドラム監督)
  • 『ターコイズの空の下で(Номин хөх тэнгэрийн дор)』(KENTARO監督)
  • 『トレジャー・アイランド(Эрдэнэсийн арал)』(O.ツェグメド監督)
  • 『ホワイト・フラッグ(Цагаан туг)』(Ch.バトバヤル監督)
  • 『獄舎Z(Зет бүс)』(Ch.ビルグーン監督)

一方、今年開催された第2回日本モンゴル映画祭では、

  • 『MONGOL』(B.アムラー監督)
  • 『サイレント・シティ・ドライバー(Чимээгүй хотын жолооч)』(J.センゲドルジ監督)
  • 『狼は夜にやって来る(Чоно үүр шөнөөр ирдэг)』(ガブリエル・ブレイディ監督)
  • 『TATAR』(B.バトデルゲル監督)
  • 『リモート・コントロール(Алсын удирдлага)』(S.ビャンバ監督)
  • 『Bedridden 〜寝たきりを選んだ男(Хэвтрийн хүн)』(S.ビャンバ監督)
  • 『SHUVUULKHUI 〜ハヤブサと男(Шувуулахуй)』(B.エンフバヤル監督)

の7作品が参加し、数週間にわたり上映され、多くの観客から感謝と称賛を受けた。

人間の五感のうち、視覚は情報の約80%を受け取ると言われている。そのため、映像や映画芸術を通じて、モンゴルという国についての興味深い事柄や人々の暮らし、芸術・文化、習慣など、多面的な情報を受け取ることができる点で、映画芸術は他に比べて特別なものなのだろう。心に残った一つの映像は、人の一生を通じて記憶に刻まれ続けるものである。

力強い映像芸術であるモンゴル映画を日本に紹介するという取り組みをおこなう、NOMADZ社の代表でありフリージャーナリストで出版業にも関わる大西夏奈子さんに話を聞いた。

 

――なぜモンゴルに関わる活動を始めたのですか?

あるとき、モンゴルについてどうしても知りたい情報があり、インターネットで長い時間調べました。そのとき、日本で得られるモンゴルに関する情報がとても少ないことに気づきました。見つかる情報は主に、チンギス・ハーン、広大な草原、相撲に関する情報が多かったです。

日本とモンゴルは関係が良好で、地政学的にも重要な意味を持つ国同士です。そのため、現代モンゴルについての情報を日本へ届けることに少しでも貢献したいと思い、私はフリーライターとしての活動を始めました。

それ以降、モンゴルをときどき訪れては、現地で自分が見聞きし体験したことを日本のメディアへ寄稿するようになりました。最初は主にビジネス分野の記事を書いていましたが、多くのモンゴル人と知り合ううちに、芸術分野で活動する友人が増えていきました。彼らと一緒にさまざまなプロジェクトを企画するため、現在の会社を設立するに至りました。

――昨年から始まった「第2回日本モンゴル映画祭」を成功裏に開催し、ご自身もプログラミング・ディレクターとして中心的な役割を担っておられます。このことについてお聞かせください。

この映画祭はそもそも、東京の映画会社MAGNETIZE代表の木滝和幸さんによる発案で始まりました。木滝さんは、モンゴルの俳優・監督として知られるアムラ・バルジンヤムさん、そしてカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞した日本の俳優・柳楽優弥さんが出演した映画『ターコイズの空の下で』のプロデューサーを務め、そのときにアムラさんの演技力と才能に感嘆したそうです。そのことが発端となり、モンゴル映画を日本に紹介したいという思いが生まれて、この映画祭が始まったという経緯があります。

『ターコイズの空の下で』が公開されたとき、私が雑誌にこの映画の紹介記事を書いたことがあり、木滝さんと知り合いました。そして私がモンゴルのさまざまな分野の方と関わりがあることを知った木滝さんから、この映画祭のアイデアについて話があり、一緒に運営することになりました。

今年開催された第2回日本モンゴル映画祭では、複数の企業が協力してくださいました。また、東京アーツカウンシルの助成や駐日モンゴル国大使館の後援もいただき、オープニングイベントは渋谷の駐日モンゴル国大使館で開催しました。

――昨年の映画祭は大変盛り上がったと聞いています。そのときのことをお話しください。

日本には個性的なアート映画専門のミニシアターが数多くあり、そのような映画館でモンゴル映画を上映しました。数千人の方が鑑賞してくれました。

――昨年の映画祭と比較して、今年はどのような点が特徴となっていますか?

第2回日本モンゴル映画祭のテーマは「五感で楽しむモンゴル旅」です。映画を通して、モンゴルの美しい自然、人々の暮らし、風のそよぎ、草原の香り、さらには都市のにぎわい、そして映画の中で流れるヒップホップやロック音楽に至るまで、日本のお客様に感じてもらいたいと強く願いました。

昨年の第1回日本モンゴル映画祭では、「モンゴル映画を人生で初めて観た」というお客様が多くいました。その中には「モンゴルにはこんなに素晴らしい映画作品があるのか」と驚かれた方もかなりいて、ラインナップの7作品すべてを観たという方も少なくありませんでした。モンゴル映画ファンが少しずつ増え始めていることを私自身、実感しています。

――具体的にはどのような点でしょうか?

昨年モンゴル映画をご覧くださった方々が、今年また足を運んでくださっています。今年初めて来られる方も大勢います。昨年映画を観た後に、モンゴルへ初めて旅行してきたという方もいました。

現在は東京からウランバートルへの航空便が毎日運航しており、行き来は非常に便利になっています。しかし、それでも渡航することに不安を感じ、ためらう人は少なくありません。

ところがモンゴル映画を観たことで、モンゴルにより関心を持つようになったり、映画祭で共通の興味を持つ友人ができたりして、現地へ旅行に行ったという方や、モンゴルの音楽を探して聴くようになったという方もいます。そのような人たちが今後さらに増えていってほしいです。

――今回上映されている7作品は、どのように選定されたのでしょうか。

モンゴルの映画関係者の友人たちから意見をもらい、近年のさまざまな作品を観た上で、木滝さんと一緒に上映作品の選定を行いました。映画祭を開催する映画館の館長にも作品をご覧いただきました。

映画祭というイベントでは、バラエティ豊かな作品をラインナップに揃えることが重要だと考えています。単にアートハウス作品のみならず、叙情的な作品、エンターテインメント性の高い作品、ドキュメンタリー系の作品、人の心を揺さぶり惹きつけるような作品など、バランスが偏らないように努めました。

――来年、第3回日本モンゴル映画祭も計画していますか。

もし実現できれば素晴らしいですね。そのときは宣伝や情報発信をさらに充実させるためにも、早い段階から準備を進めていくことが課題です。

――映画祭を成功させるために、モンゴル側にはどのような協力を望まれますか?

映画祭を今後も継続的に発展させていくためには、スポンサーとなる団体や企業の協力関係が大事です。この映画祭のことを利益が上がる事業だと考えている方もいるのですが、実際はその逆で、運営費の大部分を主催者側が自ら負担することで、ここまで続けられてきました。そのため今後は、映画祭の目的や理念を理解し、ともに発展させていくことのできる団体や企業との長期的な協力関係を築きたいと思っています。

また、この映画祭という活動を理解し、応援してくださる方々の声が、私たちにとって大きな励みと力になっていることも強調したいと思います。

――今後、第3回目の映画祭を開催する際には、モンゴル映画をどのような基準で選考する予定ですか?

より幅広い作品に参加していただきたいため、今後は公募制にして、選考を経て決めるようにしたいと考えています。

――モンゴル映画のどのような点に最も魅力を感じますか?

モンゴル人の勇敢さ、創造性、自由を尊ぶ精神、そして温かい心など、独特でかけがえのないものを感じ取ることができる点が、とても興味深く魅力的です。モンゴル映画は、単に広大な草原や馬の駆ける姿だけにとどまらず、モンゴル人の内面世界や人生観、独自のものの考え方を描いているところに価値があると思います。

また、これらの作品を通して、日本の観客は現代モンゴルの暮らしや文化、モンゴルの人々の考え方や価値観をより深く理解することができます。言い換えれば、映画を通して、モンゴルという存在をまったく新しい視点から見ることができるのです。

モンゴル映画の中には、非常に価値が高く質の高い作品があり、それらは世界中の観客の心に届き、今後さらに高く評価される可能性があると信じています。第1回日本モンゴル映画祭のラインナップに、P.ゾルジャルガル監督の『冬眠さえできれば』とP.ハグワドラム監督の『シティ・オブ・ウインド』を入れたのは、まさにそのような作品が持つ独特の世界観と価値を日本の観客にどうしても見せたかったという思いがありました。

――モンゴル映画は、もちろん日本映画とはかなり異なりますね。

もちろん、映画の背景となる社会も生活もまったく異なります。日本モンゴル映画祭にお越しくださったお客様の感想を聞いていると、モンゴル映画を観て驚いたり衝撃を受けた点が数多くあるようです。

たとえば、何かあるとすぐに殴り合いや喧嘩になる場面が印象に残るそうです。私自身はウランバートルに滞在しているとき、そのような喧嘩を道端で何度も見てきたので見慣れましたが、驚く日本人もいます。もっとも、日本映画にも喧嘩の場面はありますが……。

また、S.ビャンバ監督の『リモート・コントロール』で「ミルクを買ってくださいー!」という声が響く場面がありますが、それを見て驚いた方々から、「なぜ子どもたちが牛乳を売っているのですか?」と尋ねられました。

このように、モンゴルではごく普通の光景であっても、映画を通して日本の観客が目にすると、珍しく興味深いものとして映ることがあります。

しかし、社会環境や生活様式は違っていても、モンゴルの人びとがお互いを思いやる愛情や思いやり、両親や家族を大切にする心、他者を心から愛する深い感情は、国境を越えて観客の心に届きます。

映画の中の登場人物たちは人生の困難に直面し、苦しみを経験しながらも、希望を求めて前へ進もうと努力しており、その姿は私たちに勇気を与えてくれます。

スクリーンを通して出会ったモンゴルの人びとは、日本人の心に深く、そして長く残り、ときには親しい友人のように感じられることさえあります。このような素晴らしい出会いと相互理解を通して、私たちはモンゴルという国をより身近に感じるようになるのではないかと思います。

聞き手:本紙大阪支局記者 H・エルデネツェツェグ