コロナで帰国できなくなったモンゴル人を追ったドキュメンタリー映画が無料公開

最近YouTubeで無料公開され、一部のモンゴル人の間で「見るべきだ」とじわじわ広まっているドキュメンタリー映画があります。ここにYouTubeを埋め込むとなぜか閲覧できないので、以下のタイトル部分にリンクを貼りました。全編モンゴル語で、英語字幕がついています。

YouTube link「”Эх оРондоо л очиХсон….” баримтат кино /Full/

ドキュメンタリー映画の内容は?

タイトルを日本語に直訳すると「祖国へ帰りたかった……」。

このドキュメンタリーは2022年にモンゴル人の制作チームによって作られました。昨年東京でも在日モンゴル人の有志が上映会を行いましたが、私は日程があわず見に行けませんでした。

しかしYouTube上で一昨日いきなり無料公開され、再生回数が少しずつ伸び続けています。私も今回初めて見て、4年前のことを色々思い出しました。

ドキュメンタリーの登場人物は一般のモンゴル国民たちです。彼らは2000年2月時点、それぞれの理由で外国に滞在し、それぞれの理由で3月前後にモンゴルへ帰国予定でした。たとえば癌の手術のため韓国へ渡り術後に帰国予定だった人、両親を韓国旅行に連れて行った人、アメリカに留学していた人など。

当時、世界中でパンデミックの嵐が吹き荒れていました。各国で感染者が増えていくなか、モンゴルは長らく感染者ゼロの「優等生」でした。これについては私も「中国の隣国にありながらモンゴルのコロナ対策は素晴らしい」という内容の記事を書いたりしていました。

モンゴル政府の株が上がっていった一方で、「政治家の栄光の犠牲になった」と落胆するモンゴル人が国外に1万人以上いました。モンゴル政府が国境を封鎖したため、祖国へ帰れなくなり国外で足止めをくらっていた人たちです。

日本にも帰国を希望するモンゴル人が千人ほどいて、一部の人たちが我慢の限界だと、2000年6月に渋谷のモンゴル大使館へ抗議に行きました(当時のことは以下の記事に書いています)。

コロナで帰国できなくなっているモンゴル人たちのこと

このドキュメンタリー映画では、証言者たちがそれぞれどのような状況に陥り、どんな心境で日々過ごしていたのかを生々しく語ります。回想しながら泣き出す人が多く、見ていて苦しくなりました。しかし最後は希望ある内容だったので、その点は救われました。

いま公開する意味は?

2000年6月にモンゴル大使館へ抗議に行ったグループに私も同行し、彼らの話を聞きました。印象的だったのは、与党の人民党を非難する声が多かったこと。「人民党はモンゴル国内の感染者ゼロ状態をキープして自分たちの手柄をあげ、間もなく行われる選挙で有利になりたいのだ。そのために国外にいる私たちモンゴル国民は見捨てられた」と憤っていました。

このドキュメンタリー映画にもまさにそのような話が出てきます。

ちなみにこちらの男性は、本をいくつも出されている画家のバトツェンゲルさんです。彼は手術を受けるため韓国へ渡り、コロナによる国境封鎖で帰国できなくなり、ハンガーストライキも試みるなど表に立って抗議活動をしていました。

当時モンゴル政府は、病人や妊婦や子供や年配の方を優先してチャーター便で帰国させると言っていましたが、実態はそうではなかったと話しています。ちなみに彼は一昨日5月18日に亡くなられました。ご冥福をお祈りいたします。

この映画を制作したモンゴル人たちは、あれから4年が経ち再び選挙がやってくる今年、この映画を通して人民党が何をしたのかを人びとに知らせたいのではないでしょうか。だからあえてこの時期に無料公開へ踏み切ったのだと思います。