モンゴルの首都ウランバートルで起きたガス爆発事故

1月24日深夜、ウランバートルのドゥンジンガラブ・ショッピングセンターの近くで大きな爆発事故があり、現場にあったマンション1棟が燃え、近くにあった車も30台燃えたそうです。

AFP通信やBBCなど国外でも報道され、それによれば消防士3人を含む6人が死亡、子どもを含む14人が負傷。しかしモンゴルでは消防士3人が亡くなったことのみが報道されており、他の死者3人が存在するのかはわかりません。このことについて、モンゴルのメディアで「国外では3人でなく6人が死亡したと報道されている」という記事が出ていました。

トラックと乗用車が接触してガス漏れが発生

原因はガス60トンを積んで十字路を右折したトラックと、その右側を通ろうとした乗用車が接触し、その後ガスが漏れて爆発したことです。接触の瞬間を監視カメラがとらえていました。

ガスを運ぶトラックが画面の右上に見えます。

今から十字路を右折します。スピードはゆっくりでした。

右横を走る、同じく右折しようとしていた乗用車に接触したようです。

この後、トラックはしばらくここで停止します。

しばらく後に大爆発が起きました。

巨大な火柱が上がりました。この瞬間をスマホで撮影していた近隣住民もいて、その動画を見るといかに激しい巨大な炎が上がっていたかがわかります。

燃えたマンションにいた住民はもちろん避難しました。モンゴル人は夜寝る時に薄着や裸である場合が多いので、マイナス20度を下回る深夜の避難は大変だったはずです。「小さな子供を毛布でくるんで大急ぎで逃げた」と後にインタビューで語る、ここの住人である母親の動画を見ました。

600人の消防士が消火にあたったそうで、現在は鎮火されています。

トラックの運転手は爆発前に車体から出ており無事です。報道によればトラックの運転手は「横を通ろうとした乗用車がトラックに接触し、(容器の?)蓋が取れてガスが漏れた」と話しています。

監視カメラの映像を見ると、乗用車の方が先に右折していて、その後トラックも同じ道を右折しようとしたところ乗用車と接触したように見えます。しかしトラックの車体が大きくて乗用車がどのタイミングで右折したのかがわかりません。どちらに過失があったのかについては現在調査中です。

3人の若い消防士の死を悲しむ

モンゴル人の間で昨日最も多く話題に上がっていたのは、消火活動中に若い消防士3人が命を落としたことに対する深い悲しみです。

爆発後に3人が消火活動に入ったところ、再び爆発があり亡くなったということです。

この画像を載せて追悼するSNS投稿をたくさん見ました。

消火活動にあたった消防士たち

鎮火して1時間後、濡れて凍った衣服を着た消防士たちがコンビニに入り、一切言葉を交わすことなく、黙って温かい飲み物を買って飲んで出て行ったそうです。深夜の異常な爆発事故の消火にあたり、また同僚の死をすでに知っていた状況だったのかもしれません。ゾリクバータル氏というカメラマンが撮影したこの写真もFacebookで数千回シェアされていました。

photo by Zorigbaatar Bazarkhuu

photo by Zorigbaatar Bazarkhuu

市民からはどんな声が出ている?

市民からは事故に対してさまざまな声が出ています。例えば「消防士たちの防護服は適切なものだったのか? 節約のために簡素な防護服を与えられていなかったか?」というもの。

また、60トンという膨大なガスを積んだトラックが住宅街を走っていることに対する疑問を問う声も出ています。このエリアには学校もあり、「もし昼間の通学時間帯だったら子供たちがたくさん亡くなっていたかもしれないのに!」と怒る市民もいました。

トラック運転手に対しては同情の声も

トラックの運転手は62歳の男性。彼に対しては「運転手を責めたてるのはやめよう」「62歳で深夜にハードな仕事をさせられていたのかもしれない」といった同情の声を意外と聞きます。

しかし私が驚いたのは、トラック運転手が働いている会社の責任者バータルジャブ氏の談話です。

彼は「事故後、運転手たちと会っていないので詳しい状況がわからない」とした上で、「ガスを積んだトラックは当時許可を得た上で道を走っていました。山道を走るわけにはいきません」と、道が空いていた深夜帯にトラックが走行していたことの正当性をまず語ります。

そして「無責任は自然災害よりも危険であることを今回の事故が示した」と言い、「我々のトラックのそばを通っていた車が突然止まり、事故が起きるなんて誰が予想したでしょうか」と続けました。右折していた乗用車が突然停車したという情報をこの責任者がすでに得ていて、こう語ったのかもしれませんが(このことが正しいのかは不明です)、読んでいて違和感を感じてきました。

さらに「ですから市民は皆が責任を持った行動をしなければなりません。2人の運転手はどちらも責任ある行動をとらねばならないし、どちらにもミスがありました。我が社は基準に沿って仕事を行っていましたが、予期せぬ事故が起きてしまいました」というところで記事が終わっています。

つまり会社としてはルールに沿って業務を行なっていたとし、運転手たち個人に責任を転嫁しているように聞こえます。実際そうなのかもしれませんしそうでないのかもしれませんが、他人事のような言い方をしているのは残念です。

追記(1月26日)

ガス運搬をしていた会社の責任者が会見を行い、「(事故を起こした)トラック運転手は飲酒も喫煙もしない、事故歴もない優良ドライバーです。我が社は彼のことを最後まで守ります」と述べたという記事が出ました。私が上記に書いたものと矛盾する内容なのでここに追記します。

その後さまざまな記事や情報が錯綜していて、何が真実なのかは今はまだわかりません。

追記(1月28日)

消防士3人の他に、入院中だった19歳の若者が亡くなったという報道がモンゴルで出ました。