深夜に ”エモ” になるモンゴルの若者

30代くらいのモンゴルの友人たちと話していると「エモ」という言葉をよく聞きます。彼らは時折ひどく感傷的になって(とくに深夜)、その状態を「エモになる」と表現します。「昨晩エモになって、朝までずっと1人で酒を飲んでた」とか「ときどきエモになって眠れなくなる」とか……。

日本の若者の間でも「エモい」という言葉が流行りましたが、日本人が使う「エモ」は「感動した」「青春っぽい」「グッとくる音楽」のように、わりとポジティブな意味合いが強い気がします。モンゴル人もポジティブな意味で「エモ」を使うことはあるものの、「感傷的になって寂しい」「孤独を感じる」といった意味で使うことが多いようです。

また昨日の深夜、ウランバートル在住の30代後半のモンゴル人女性と話していたら、彼女が「自分は昔から鬱っぽい気質がある」と言い出しました。私は彼女が画家であるために繊細な一面があるのかなと思ったのですが、本人いわく、

「アーティストだからというのもあるかもしれない。でも今の20代には鬱々した人が少なくて、30代から40代にかけての世代に鬱っぽい人が多い。なぜかというとモンゴルが1990年代初めに社会主義から民主主義に移行したとき、この世代の両親は失業して新しいビジネスを突然始めなければならなくなった。親がいつもすごく忙しくて、私たちは親の愛情をしっかり受けることができなかった。そのときの淋しさが大人になっても影響して、頻繁にエモになったり鬱っぽく落ち込むんだと思う」

民主化へ移行した時期の混乱が、現代のモンゴルの若者の精神に影響を及ぼしていると彼女は言うのです。あくまで彼女の個人的な考えにすぎないのか、世代的に本当にそういう傾向があるのかはわかりません。他の若者たちにも話を聞いてみようと思っています。

ちなみに「エモになる」はモンゴル語で「эморох」(動詞)と言うそうです。