海外マーケットへの旅

Mongolian Economy(2017年5月発行)に掲載

2017年4月5〜6日、東京ビッグサイトで「ファッションワールド東京2017」という日本最大のファッション展示会が開催されました。世界38か国から890の会社が出展し、約2万人が来場。モンゴルが初めて出展すると聞いて、私も会場を訪れました。

5日には、国家開発庁長官B.バヤルサエハン氏と在日本モンゴル大使館 経済貿易担当参事官L.ダワージャルガル氏が、モンゴル軽工業の魅力についてのセミナーも開催。

経済産業省 通商政策局 北東アジア課 課長補佐の武田英孝氏は「モンゴルからのカシミア輸出をもっと増やせないかと、経済産業省が調査報告書を現在作成中で、もうすぐ皆さんに公開予定です。その調査をふまえて今年度は日本から専門家をモンゴルへ派遣し、より具体的な対策をモンゴルの方々と一緒に考えたい」と聴衆に語りました。

セミナー終了後、巨大な会場を歩いていると馬頭琴の音色に導かれてモンゴルのブースにたどり着きました。ゲルのハーナ(木製の壁)を立て、モンゴルの雰囲気を醸し出しています。

ブースに入るとGOBIやICHIN CASHEMEREやNATIONAL CASHMEREやSIILEN CASHMEREのカシミア製品、Khos Azの靴、CHANDMANI MONGOLIAやTALIMの革製品、Khaadin Gerのフェルト製品など、モンゴルの人気ブランドがたくさん展示されていました。商談コーナーもあり、訪問者はその場で生産者と打ち合わせができます。

モンゴルの中小企業が単独で海外市場に大きなブースを出すのは資金的に難しいものです。しかし今回は、複数企業が共同で出資し、一つの大きなブースを作りあげていました。このプロジェクトを主催したのは、Anglo Freight LLC、TOBA MARKET LLC、Mongolian Cultural Center、HRSD Associationの4社。主な参加企業はBELON LLC、O&BN、SHINE GANTIG LLC、TSAGAAN KHOROL LLC、ICHIN CASHMERE LLC、KHAADIN GER LLC、MONOS UB LLCなどです。

TOBA MARKETの女性会長D.オユンビレグ氏は、プロジェクトに参加したい企業をモンゴルで募り、半年かけてブースを準備しました。「EPAというチャンスを活かして軽工業分野の貿易量を増やしたい。そのために国際的な展示会に参加して、モンゴルブランドの製品を日本や世界の人たちに直接見て知ってもらいたいのです」

ブースを訪れた日本のファッションデザイナーは「モンゴルは相撲のイメージしかなかったので、こういうブースを見つけて正直驚きました。モンゴルで作られた製品を見たのは今日が初めてで、カシミアや革製品が美しかった」と話していました。

オユンビレグ氏は2015・2016年に、アメリカの国際展示会でモンゴルのブースを出展した経験があるそうです。「展示会で海外のお客様から注文をいただいた成功体験を通じて、モンゴルのカシミアや革製品が世界の人から望まれているものなのだとわかりました。日本市場に参入するのは難しいとずっと思っていましたが、EPAが結ばれたので今年は日本へ来ました。今回は多く売ることよりも、日本人がどんなモンゴル製品を好むのかを知ることのほうが重要な目的です」

さて、商談コーナーではどんな会話があったのでしょうか?

楽天という日本最大規模のインターネット・ショッピングモールを運営する通販会社は、カシミア製品に興味を示し、楽天ウェブサイトで販売する話を進めているそうです。モンゴル製品を効果的に販売するために、楽天のような大手の通販会社とコラボレーションできるのは素晴らしいです。

EPAが締結されてもうすぐ1年が経ちます。このチャンスを活かすために大事なのは、モンゴル企業と海外企業との良い出会いと、お互いのルールや好みを理解する努力だと思います。輸出ビジネスに関わっているE.オドゲレルさんは「モンゴルと日本では流通の仕組みが違う。そこを理解しないと誤解が生まれてしまい、ビジネスが上手くいかなくなります」と話します。

たとえばモンゴルでは、原価1ドルの製品を市場でも1ドルで販売できる。しかし日本では、製品が複数の卸会社を仲介しないと市場で販売できないことが多く、原価1ドルの製品が市場では5ドルになることもある。卸会社が仲介して利益を得るためです。

今回モンゴル企業が共同出資して日本人にモンゴルブランドを見せに来てくれて、私も嬉しかったです。「もっと大きなブースを出して、モンゴルの工場技術者やクリエイターも来日できたらいいと思います。もし可能なら来年もこのイベントで出展したいです」とオユンビレグ氏は笑顔で話していました。