第13回白鵬杯でモンゴル選手が金・銅メダルを獲得! 世界各国から920人が出場

2023年2月12日に両国国技館で「第13回白鵬杯」が開催され、モンゴルチームの奮闘についてモンゴルの人気メディア「iKon.mn」に「白鵬杯は未来の横綱を生み出している」という記事を書きました(和訳は下)。

“Hakuho cup” тэмцээнээс ирээдүйн аваргууд “төрж” байна

宮城野親方主催の第13回白鵬杯が2月12日に両国国技館で行われ、日本、モンゴル、香港、台湾、アメリカ、タイ、ウクライナ、オーストラリアから920名の選手が出場しました。
モンゴルからは選考会で選ばれた9人と、日本の中学校に留学中の2人が参戦。
その結果、個人戦で金メダル1個(10歳の部でバヤンホンゴル県のハシエルデネ君)、銅メダル1個(11歳の部でトゥブ県のチムグン君)、団体戦(ハシエルデネ君、チムグン君、ハシマルガド君、ゼレメ君、エンフトゥグルドゥル君)で銅メダルをとりました。また、団体戦に出た選手のなかでバヤンホンゴル県のハシマルガド君が殊勲章に選ばれました。
子供たちはモンゴルから相撲コーチのナランバタ先生とバトジャルガル先生に引率されて来日。親たちはモンゴルの自宅でYouTubeのライブ中継を観戦し、お子さんたちの活躍を見守りました。
金メダルをとったハシエルデネ君のお父さんは600頭の家畜がいる遊牧民で、「とんでもない緊張が続いて、うちにある息子のデール(民族衣装)の端を常に握りしめながら見ていました」と話しました。お母さんは「泣いたり笑ったり大忙しで見つめていました」と話しました。
宮城野親方は現役力士だったとき、横綱として偉大な足跡を残しました。しかしそれと同じくらい、2010年から毎年開催を重ねている白鵬杯の功績は大きいです。幼いときにこの大会で好成績を出し、成長して大相撲で活躍する選手の数が今どんどん増えています。

優勝したハシエルデネ君は家畜600頭の遊牧民の子

これまで私は5回くらい白鵬杯へ取材に行きましたが、モンゴルチームは今年が今までで一番の好成績でした。金メダルをとったバヤンホンゴル出身のハシエルデネ君(10歳)は遊牧民。安定感があり、すべての試合で圧倒的な強さを見せました。何よりすごいと思ったのが、初めての来日だというのに気持ちが落ち着いているところ!

私は昨年8月、ハシエルデネ君と彼のご両親にモンゴルで会っています。私がバヤンホンゴル県の総合生協学校の相撲クラブへ取材に行ったとき、彼らがちょうどドルノド県の親戚の家に出かけていて、ご両親から相撲クラブの先生へ何度も連絡があり「バヤンホンゴルで会えないなら、ドルノドからバヤンホンゴルへ帰る途中でウランバートルに寄るので会ってほしい」と言われました。”日本人が相撲クラブの取材に来た” と聞いていたようです。この時点で、ハシエルデネ君は昨年10月のわんぱく相撲全国大会のモンゴル代表に選ばれていました。

ところがウランバートルで私は謎の風邪をひいてしまい(コロナではなかったのですが)1週間まったく声が出なくなり、彼らに「何も言葉が話せないので約束をキャンセルさせてほしい」と伝えました。すると「声が出なくてもいいから会いたい」と言われ、なぜそんなに熱心なのだろうと不思議だったのですが、今思えばという感じです。

それでランチに行ったのです。ハシエルデネ君は、シャイな男の子。一方、お父さんとお母さんはエネルギッシュでど迫力。私は彼らからラクダのミルクのアイラグ(馬乳酒)2リットルとラクダのアーロール(硬いチーズ)をお土産にいただきました。

ところがその後なんと! ハシエルデネ君の書類に不備があり(誕生日の記入内容を間違えていた)来日が叶いませんでした。これはさぞ悔しいだろうと思い連絡すると、「本当に残念でショックで……。でも息子は来年の白鵬杯で必ず日本へ行きます。そのときはよろしくお願いします」とお父さんから返事が。

そして今回の白鵬杯に出るためのモンゴル代表選考テストを受け、見事に有言実行。でもまさか金メダルをとるほど強いとは知りませんでした。お父さんもモンゴル相撲をやっていて、小さいときはお父さんと練習していたそうです。小学生になってからは、同じバヤンホンゴル県にある総合生協学校のガンホヤグ先生の相撲クラブで学んでいます。今年に入ってからは、白鵬杯の準備のためウランバートルのナランバタ先生にも指導を受けています。

ど迫力ボディのお父さん。

はにかむハシエルデネ君。土俵を下りるとのんびりしていて、かわいいです。

白鵬杯では宮城野親方も彼の活躍を嬉しそうな表情でしっかり見つめていたので、日本へ相撲留学して大相撲の力士になる未来はほぼ確定していると言えそうですが、お母さんに「息子さんは将来日本で力士になりたいという気持ちがあるのですか?」と尋ねたら、「将来どんな道に行きたいのかは息子自身が知っていると思います。それが相撲なのかわかりませんが、私と夫は息子の意志を尊重してその道を応援するつもりです」とのことでした。

銅メダルのチムグン君はわんぱく相撲でもベスト8

銅メダルをとったチムグン君は、昨年秋のわんぱく相撲でもベスト8入り。彼もまた将来が期待される一人です。

わんぱく相撲のときは、ご両親も一緒に来日して応援していました。ご両親はウランバートルで雑貨店を経営しています。

殊勲章のハシマルガド君は過去にわんぱく相撲と白鵬杯の出場経験あり

今回の白鵬杯で、個人戦では緊張した表情で力が出せなかったものの、団体戦では見事に勝ち続けてチームに貢献したバヤンホンゴル県出身のハシマルガド君。

彼も昨年のわんぱく相撲代表に選ばれていました。一緒に来日したお母さんとおばあちゃん。お母さんはシングルマザーで彼を育てており、息子さんの活躍が嬉しくてしょうがない様子。母親としてはぜひ相撲の道に進んでほしいそうですが、ハシマルガド君自身はエンジニアになりたいという思いがあり……。相撲留学スカウトの声も出てきて、相撲で活躍すればするほど葛藤が生まれているようです。

今年からは幼稚園児も参加がOKに!

白鵬杯は小学生と中学生が参加対象。しかし今年からは幼稚園児の部ができて、チーム戦が行われました。昼休みには、なんと宮城野親方と北青鵬関と炎鵬関による相撲教室も!

髷がなくなった宮城野親方のリラックスした顔が印象的でした。

後列右は鳥取城北高校出身の北青鵬関(モンゴル人ですが子どもの頃から北海道に住んでいるため日本人枠で宮城野部屋に入門)。左は炎鵬関。

相撲教室のあと、「最後にみんなで四股を10回踏もう!」と宮城野親方。

モンゴルチームは今日帰国予定。ようやく家族と会えます!

ハシエルデネ君が地元に凱旋帰国、金メダルにちなんで……