10月15日からウズベキスタンのサマルカンドで、上海協力機構(SCO)の第22回首脳会議が開催されます。ここ数年、上海協力機構がミーティングを活発に開いていますが、コロナ禍だったためオンラインで行われていました。
しかし今回はリアル開催。上海協力機構を率いる二大巨塔、プーチン大統領と習近平国家主席もリアル参加するそうです。ウクライナ侵攻中のプーチン大統領はもちろんのこと、罤20回党大会を控えているのにもかかわらず、約3年ぶりに外遊する習近平氏にも注目が集まっています(この時期に外遊できるということは、3期目のトップ続投が確定したからと言えそうです)。
この二人が15日に対面で会談予定で、「主な議題はウクライナと台湾」だと報道されています。台湾について、中国がロシアと何を相談するのでしょうか?
さらに、この会談にモンゴルのフレルスフ大統領も参加するようです。ウクライナ侵攻の影響で欧州にガスをたっぷり売ることができなくなったロシアは、今後の売り先として中国に期待していますが、そのガスを送るため新たに建設するパイプラインがモンゴルを通過する予定です。
ロシアから中国へはすでに「シベリアの力」というパイプラインが2019年に稼働していますが、こちらはモンゴルを通過していません。新たに作るパイプライン「シベリアの力2」がモンゴルを通過すれば、モンゴルは通過料を得ることができ、中国とロシアとの関係性がますます強まることになります。
モンゴルのあるエネルギー関係者は、「パイプラインはモンゴルを通過する。来年からロシア人エンジニアと兵士が3千人余りモンゴルに来て工事を始める予定で、モンゴル国内で通過するルートも決まっているが、どこを通るのかは今言えない」と私に言いました。
上海協力機構の参加国は?
これまで日本やアメリカなど「第三の隣国」とも仲良くし、絶妙なバランス外交を行ってきたモンゴルですが、今後はどうなるでしょうか? 現在の上海協力機構は以下の国々で構成されています。
加盟国:インド、カザフスタン、キルギス共和国、中国、パキスタン、ロシア、タジキスタン、ウズベキスタン
オブザーバー国:イラン(正式加盟予定)、アフガニスタン、ベラルーシ、モンゴル
パートナー国:アゼルバイジャン、アルメニア、カンボジア、ネパール、トルコ、スリランカ
今回の首脳会議で、これまでオブザーバーだったイランが正式加盟する手続きを行います。さらにベラルーシの正式加盟も検討されるようです。この流れの中で、今後もモンゴルがオブザーバーの立場をキープできるとしたら、もはや奇跡のように思えます。下の地図のうち、濃い緑色が正式加盟国、黄緑色がオブザーバー国、黄色が対話パートナー国です。
いずれモンゴルも中国とロシアからの圧力が強まり、正式加盟する日が来るのでしょうか。ウクライナ侵攻の影響で、今は世界中が二つのグループに分断されつつありますが、民主主義国モンゴルはどんどん苦しい立場になりますね。
希望があるとすれば、インドの存在ではないでしょうか? インドは上海協力機構の加盟国であり、ロシアと以前から深い繋がりがあります。そうでありながら、アメリカや日本から熱望されて「クアッド(QUAD)」にも参加し、二つのグループのどちらにもしっかり属して、どちらからも大事にされています。モンゴルがインドのような立ち回りをすることができたら、どんなに良いかと思うのですが。。。
モンゴルへはこの夏、ロシアのラブロフ外相と中国の王毅外相が順番に訪問し、8月末にはイランの代表団もやって来ました。そしてつい最近、フレルスフ大統領が北朝鮮の金正恩総書記をモンゴルへ招待したという報道が出ました。モンゴルがこれらの国々との関係を深めつつ、「第三の隣国」である日本やアメリカとも良好な関係を堂々と築くことができる「バランス外交」を継続できることを願います。