巣鴨のモンゴル料理店「孤独のグルメ」シリンゴル店主は馬頭琴天才少年だった

先日「孤独のグルメ」を見てウズウズし、巣鴨の老舗モンゴル料理店「シリンゴル」(1995年創業)へ! 大学生のとき以来20年ぶりに訪れました。

巣鴨駅を出て10分弱歩くと、閑静な住宅街の半地下にシリンゴルはあります。私が大学に入学したばかりの時期、蓮見治雄先生や温島廉三先生や岡田和之先生と同級生たちと来たことがあります。そのときと変わらない佇まいでした。

入り口の階段を店内へ下りていく途中で「満席」の貼り紙を発見。事前予約しておかないと入れないことが多いそうです。なぜか卵の販売も!

いただきます!

モンゴル料理と言えば羊! 豪快に羊肉を茹でたチャンサン・マハを早速オーダー。一緒に訪れた内モンゴル出身の友人はシリンゴル店主のチンゲルトさんと旧知の仲で、一番美味しいという肩甲骨部分の肉を出していただきました。友人が慣れた手つきでナイフで骨から肉をはずすところをぜひ動画でご覧ください。動画内のシャカシャカという音は、岩塩をおろし金でおろす音です。

アツアツで美味しそう〜!

友人は、シリンゴルが羊肉を取り寄せている巣鴨の石川精肉店から、毎年50匹くらいの羊を個人で購入して自宅冷凍庫に保存しているんだそうです。解体も自宅でやるとのことで、さすがモンゴル人、日本でも日常的に羊肉をさばいているんですね!

肩甲骨部位のチャンサンマハ、熱くてやわらかく本当に美味。これだけ食べるために早くまたシリンゴルへ行きたいくらいです。じゅるり!

巨大なボーーーズ!

小龍包かと思うほどに濃厚なスープが中から溢れ出してきてアツアツ最高、ヤケドに注意! 具は羊肉と刻んだ青ネギがたっぷり入り、かなり日本人好みの味付けになっていて、個人的にはこれまで食べたボーズの中で一番好きかもしれません。

箸置きは、シャガイという羊のくるぶしの骨。子供のおもちゃ、ゲーム遊び、占いの道具など、色々な使われ方をします。

こちらはこのお店で作られたオリジナルメニュー、シリンゴル・サンド。小麦粉で作った手のひらより大きなサイズの皮に甘味噌を塗り、羊肉と焼き卵と胡瓜と白髪葱と春雨をお好みで置き、自分で巻いていただきます。モンゴル料理が苦手な人でも食べやすい味だと思います。

店主のチンゲルトさんは内モンゴル・シリンゴル出身の馬頭琴奏者

閉店直後の店内で、チンゲルトさんをパシャリ! この日一緒に店を訪れた友人は、チンゲルトさんと同じシリンゴル出身で、子供の頃からの旧知の仲。友人から聞いたチンゲルトさんの話をここでご紹介します。

1980年頃、内モンゴル自治区内の最大の文芸団体である「内蒙古歌舞団」がシリンゴルへやって来たそうです。目的は、歌や馬頭琴と踊りの堪能な少年少女を選抜するためでした。結果として、地元の馬頭琴奏者の天才少年が選ばれました。その子がチンゲルトさんだったのです。当時は「文化大革命」が終わったばかり。音楽を演奏する人は ”ならず者” だと意識されていたので、こうして選ばれていくこと自体が珍しかったそうです。

「内蒙古歌舞団」の馬頭琴奏者だったチンゲルトさんは、その後来日。1995年に「シリンゴル」をオープンし、現在もここでモンゴルの文化や生活や自然を題材にした曲を弾いていらっしゃいます。

このお店をチンゲルトさんと共に20数年間切り盛りしてきたもう一人の大黒柱は、日本人の田尻さんです。二人はレストラン経営の他にも、多くの小学校などへ出向き「スーホーの白い馬」を演奏するなど、モンゴル文化を紹介する活動もされています。

チンゲルトさんも、(写真には写っていませんが)日本人の田尻さんも、20年前に私がお会いしたときと全くお変わりなく見えるのは気のせいでしょうか。ここだけ時が止まったかのように感じます。しかしお料理の味は格段に進化しており、連日満員になるのも納得。コロナ禍にもかかわらず四半世紀も人気店であり続けられるのは、お二人の地道な努力の賜物なのだろうと思いました。

この日、店の外に設置されたテーブルで一組のゲストがお食事なさっていました。お誕生日のお祝いのために来店され、特別に外のテラス席が設けられたそうです。店主のこんなお心遣いにも密かに感動し、これからまたシリンゴルに通い続けようと心に決めた夜でした。

ごちそうさまでした!

「孤独のグルメ」井之頭五郎さんが巣鴨のシリンゴルに上陸!