嬉しいニュースです!
アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショートフィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)2021」で、「Make Impossible Possible(不可能を、可能に)」を伝えるアワード、第2回「バイオジェン・アワード」の受賞作がモンゴルの兄妹愛を描く『階段』に決定しました!
アジア インターナショナル部門ノミネート作品として、6月30日(水)までSSFF & ASIAグランドオンラインシアターで視聴できます。わずか12分の短編映画ですが、心豊かな気持ちにさせられる作品でした。
オンラインシアターURL:https://www.shortshortsonline.org
物語の舞台はウランバートル郊外のゲル地区。とあるゲルに暮らす車椅子の兄には、美容師になりたいという夢があります。そんな彼の背中を、元気な妹がひたむきに押そうとするのですが……。希望と絶望と、なんとも言えない明るさが入り混じるこの物語に、私はすっかり魅了されてしまいました。
映画を観てふと思い出しました。
かつて、ウランバートルから車で2日間かかるぐらい遠い西の草原のゲルを訪問したとき、ゲルの中から車椅子の女性が出てきたんです。そのとき私は勇気がなくて、その女性に「車椅子でどうやって遊牧生活を送っているのですか?」と聞くことができず、その後も心に引っかかっていました。遊牧民にとっての仕事は、パソコンではなく自分の手足を使い、家畜の力を借りて行います。日本で生活する以上に、モンゴルでは車椅子利用者にとって大変なことが多いだろうな、と思ったのです。
たとえ街に暮らしていたとしても、モンゴルは道が悪くて段も多く、車椅子利用者にとっては簡単ではないですよね。ましてやゲル地区に暮らしていたら、車がないとなかなか自由に移動ができません。「階段」の中で、街へ出るためにバスに乗るシーンが出てきますが、このバスに乗るには入り口の階段を登らないといけません。
1年かけて、60人がかりで12分間の映画を作った
「階段」の制作に関わったスタッフは全部で約60人いて、そのうち18人が障がい者だそうです。本プロジェクトはオーストラリアのBus Stop FilmsというNPOとArts Council of Mongoliaが協力して始めたもので、2019年にモンゴルで1年かけ、障がい者と共に映画を作るワークショップを行ったとのことです。
いよいよ撮影する段階になり、Arts Council of Mongoliaから短編映画の監督経験のあるゾルジャルガル・プレブダシさんに声がかかりました。彼女の仲間であるプロのスタッフ陣が障がい者のメンバーに映画制作で必要な様々な技術(照明、カメラ、メイクなど)を指導して、撮影を進めたそうです。
ゾルジャルガル・プレブダシ監督は桜美林大学で映画制作を学び、卒業後はモンゴルのゲル地区に住んでいます。彼女の映画は西東京市映画祭でシネマ倶楽部特別賞、タレンツ・トーキョー・アワード、AFA-MPA映画ピッチング・コンテストで審査員特別賞などを受賞しており、これからの活躍が非常に楽しみな若手監督です。
ゾルジャルガル監督のインタビューをデファクト新聞に寄稿しました。彼女がモンゴル社会について感じている問題意識や、なぜゲル地区を舞台にした映画を作っているのかなど語っていただきましたので、ぜひご覧ください。