忘れられない、モンゴルで教わった遊びがあります。砂漠の「ひこうき遊び」です。
もう20年ぐらい前になりますが、私がまだ大学生でモンゴル人一家とゴビアルタイ県を旅していたとき、砂漠に湖が突然現れました。
湖を見つけたモンゴル人は「素敵!」と叫び、車を降りて、みんな次々と水の中へ入っていきました。水着なんて持っていません。洋服をそのへんでポンポン脱いで、女性はブラジャー丸見えですが全く気にしません。
そのときは10人以上のモンゴルの老若男女と一緒でしたが、誰一人泳ぎ方を知らなくて、みんなお互いにひたすら水をかけ合って遊んでいました。日本から来た私がクロールや平泳ぎをしてみせると、「おおー!」と歓声がわき、泳ぎ方をレクチャーしてと言われました。モンゴルの大自然の中でほとんど役立たなかった私が(林の木の切り方を知らない、羊の内臓の処理法を知らない)、唯一モンゴル人たちに何か教えることができた瞬間でした。
そうしてひとしきり遊んだら、みんなは岸辺の砂の上にごろりと寝転んで、体に砂をまぶして水を乾かしながら温まりました。タオルなんて誰も持っていません(笑)。
すると今度は、大人も子供も砂漠の丘をかけ登り、上から下へと滑り台のように滑り落ちる遊びを始めました。誰かが滑るたびに、砂が「ゴオオオーーー」と地響きのような音を鳴らし、まるで飛行機が飛んでいるような音が響きわたります。「ひこうき遊び」と言うそうです。
砂漠にはフナムシのような、黒くて足の速い虫がたくさん隠れていました。モンゴル人たちはその虫を一生懸命つかまえては大きなガラスビンに入れ、ウオッカを注いでお酒を作っていました。「このお酒は胃にすごくいいのよ」とモンゴル人のお母さんが教えてくれました。
こんな感じで、モンゴル人はとっても遊び上手です。遊び道具がなくてもワイワイとはしゃいでいます。