プーチン大統領が公式訪問しているモンゴル国内の世論は?

今朝日本の大手メディアでモンゴルのニュースが流れました。ロシアのプーチン大統領が昨晩空路でモンゴルに到着し、公式訪問が始まったというものです。

NHK「プーチン大統領 モンゴルを訪問 自身の逮捕状出すICC加盟国」

画像はNHKニュースより

日本のメディアによると、プーチン大統領には国際刑事裁判所(ICC)から「戦争犯罪の疑い」で逮捕状が出されており、モンゴルはICCの加盟国なので「プーチン大統領を逮捕する義務がある」。ちなみにウクライナは最近ICCに加盟したようですが(追記:ウクライナがICC加盟国というのは誤りで、「ウクライナはICCの管轄権を受諾した」が正しいです)、ロシアやアメリカは非加盟国です。

このニュースに対し、Xの日本人ユーザーからは「モンゴルを見損なった」「モンゴルは国際的な信用をこれで失ったな」「モンゴルが今回逮捕の義務を果たさないと今後も同じ事例が起きることを許してしまう」といった批判的な意見が目立ちました。一方で「ロシアの隣国だからしょうがない」と擁護する声も。

モンゴル国内ではどんな反応?

当然モンゴル国内でも話題になっており、国民の意見は分かれています。

もっとも多いのは批判的な声。たとえば、「結局モンゴルは今も民主国家になれないで、共産国家のままなんだ」「モンゴルは独裁国家の言いなりだ」「公式訪問?」「世界がモンゴルをどう見るか考えてみろ」など。

地政学的な観点から、「国際世論が何と言おうと、中国・ロシアという巨大国に挟まれているモンゴルの立場はこうするしか道がない」「ロシアの訪問を拒否するという選択肢はモンゴルにはない。そんなことをした日にはモンゴルという国は潰されて消えるしかない」「モンゴルのエネルギーはロシアに握られている」という意見も見かけます。

異色の意見としては、ある著述家でインフルエンサーの女性が「モンゴルは怯えながら彼の訪問を受け入れたわけではない、むしろ勇気を示したのだ」と発信して支持を集めていました。彼女いわく「トランプ大統領でさえ母国で銃撃される時代に、モンゴルがプーチン大統領を無事に招き入れ無事に母国へ帰せたなら、モンゴルはハイレベルな国賓訪問を行える国であると世界へ示すことができる。このような見方もできるのでは?」と。

モンゴル国内にさまざまな意見がある一例として、プーチン大統領の到着直後にFacebookで流されたニュースサイトの以下の投稿に「いいね」も「超いいね」もあれば「怒」マークもついています。ただしこの投稿は「大統領訪問にあわせてウランバートル市内の大通りが一時的に規制される」という内容を報じたものなので、読者の反応が参考になると言っていいものかはわからないのですが……。

プーチン大統領は5年ごとにモンゴルへやってくる

プーチン大統領がモンゴルを過去に公式訪問したのは2004年、2009年、2014年、2019年、そして今回の2024年。これら訪問の目的は共通して「ハルハ河戦争記念式典」をモンゴルと共に祝うためで、今年は「戦勝85周年記念」にあたります。

ハルハ河戦争というのはモンゴルとロシア側の呼び方で、日本ではノモンハン事件と呼ばれています。私は2019年のハルハ河戦争80周年記念のときにモンゴルにいたので、ロシアからプーチン大統領のみならずロシア軍戦車や空軍機までモンゴルへやってきて大々的なセレモニーを開催するのを見ました。両国が「兄弟の絆」を誇らしく確かめ合う光景は、私を含め多くの日本人が知らない世界だと思います。

ノモンハン旅9/ノモンハン事件の戦勝博物館に展示されていた日本兵の遺品