2000頭の家畜と暮らす遊牧民一家と9年ぶりに再会しました。セレンゲ県の草原に暮らしているトーギー(父)とヤンジカ(母)夫婦とその子どもたちです。
彼らとは2015年8月に偶然知り合って以来Facebookでつながり、たま〜に「元気?」とチャットしていました(彼らの暮らす草原にはWifiがないので返信がくるのはだいたい1ヶ月後)。私はこれまでモンゴルへ行くたびに彼らのゲルへ行きたいと思っていたのですが、なかなか実現しませんでした。
彼らに出会ったきっかけは、私が2015年の夏にその前年に知り合った遊牧民のゲルを再訪するため、1人でウランバートルから乗合車でトゥブ県ジャルガラント村へ向かったことでした。村に到着したら迎えに来てくれるはずの人と連絡がつかず、空が暗くなりかけて不安になっていました。
すると乗合車の運転手をしていた新婚カップルが「遊牧民に会いたいのならうちの親戚のゲルに泊まる?」と連れて行ってくれたのです。あとで聞いたら、新婚の彼らはその日引っ越しをする予定だったのに、それを延期して私を助けてくれたのでした。ひどい嵐の夜で、暗闇のぬかるみの中を何度も道に迷いながら私たちは深夜にゲルに到着しました。
9年前、たどりついたゲルで撮った写真です。当時はトーギーとヤンジカ夫婦の他、ヤンジカのご両親、トーギーとヤンジカの間に6歳のミシェールという女の子と2歳のダムカ(ダムディンドルジ)という男の子がいました。家畜の数は500〜600頭だったと思います。
皆おおらかな性格で、遊牧の仕事を家族で助け合いながらやっていました。私の他に1ヶ月前からそこに居候している謎の男性がいたり、オープンな人たちでずっと心に残っていました。
そして今回訪れたら、家畜が2000頭(そのうち馬500頭)に、子どもは4人に増えていました。遊牧民の繁栄ってこういうことなのだなと、彼らを見て思いました。
6歳だった長女ミシェールは15歳に、長男ダムカは10歳に。ふたりとも遊牧の仕事をバリバリ手伝う立派な戦力になっています。初めて会った次女と三女はまだ小さく、親やお姉ちゃんによく甘えていました。
「家族で一番おしゃれにうるさいの」とヤンジカが話していた次女。最初はシャイでしたが人懐こい性格だとだんだんわかってきました。
末っ子の三女はお父さんが大好きで常に独占状態! この日はナーダム直前の時期で、相撲と馬術の腕が評判のトーギーはダムカと他の家の親子と共に別の場所で合宿をしていました。3日ぶりに家に帰ってきたパパに末っ子の彼女は「会いたかった〜」とワンワン泣いて抱きつき離れません。ちなみに彼女はモンゴルでおなじみの断髪式を終えたばかりなので坊主頭です。
朝6時前。遊牧民の1日のはじまり。
ヤギ、ヒツジ、牛、馬たちはすでに起きてメエメエ、モーモーと鳴いています。
働き者のヤンジカが、ゲルのそばで前日の食器洗いをしていました。彼女が遊牧民出身の夫トーギーと出会ったのはウランバートルの学校。もともと彼女は遊牧民ではなかったのですが結婚してこの生活に。トーギーによれば「一生懸命働く人だと見ていて思ったから結婚したかった」。ヤンジカと結婚してからは他の女性を一瞬チラッと見ることはあっても連絡とったりはせず、興味がないそうです(拍手)。
搾りたての牛のミルクをわかして表面にできる生クリームの層をウルムといいます。
砂糖と一緒にパンにつけて食べると絶品のウルム。
塩味のミルクティーをつくるヤンジカ。後ろにいるのは、遊牧民のところへ行ってみたいということでご一緒した日本人のカルロスさん。前日に250kmのゴビマラソンを完走したばかり。
こちらも同じくゴビマラソン完走直後のランボーさんと彼のご家族。私を含め7人の大所帯を遊牧民一家は快く受け入れてくれました。
外で朝ごはん、贅沢ですね。
家畜の放牧や乳搾りなど朝から仕事が盛りだくさん。馬たちを放牧地に連れて行き、帰ってきたトーギーが手を洗うためヤンジカに水をもらっています。
柵の中にいる子牛。この春生まれた子たちです。
ミシェールとお母さんが牛の乳搾り。ミシェールが子牛を近づけると母牛からミルクがよく出ます。ミルクをある程度絞ったら今度は子牛が飲みます。
下の二人の女の子たちはまだすやすや。
あ、起きた!
昼前にヤギを屠ることに。
親戚の男性もこの日はゲルに泊まっていて、彼がヤギにナイフを入れました。これまで出会った遊牧民は首元に切り込みを入れ、そこから腕を入れて大動脈をちぎり一瞬で殺していたのですが、こちらの男性はおなかのあたりを切って腕を入れていました。
ヤギが息絶えた後、内臓が取り出されます。子どもたちはこの光景を見ることが許されず、大人から「あっちへ行きなさい」と言われていました。本当は女性も見てはいけないそうです。
慣れた手捌きで作業をするトーギー。
内臓がいっぱい出てきます。
新鮮な赤色。
お父さんに水をあげたい末っ子。
吊るす理由は皮を剥がす作業がやりやすいからだそうです。
きれいにとられた皮と頭。
ここからミシェールが大活躍。
内臓を洗うのは女性の仕事です。
早朝に放牧の仕事を手伝ったダムカは髪の毛を洗う!
草原もゲルの中も壁がないのでコソコソできず、つねに皆が丸見えです。モンゴル人は(一般的に)相手へストレートに物を言う性格の人が多いですが、このオープンな環境も影響しているかもしれません。
ゲルの中に入ってヤンジカが内臓鍋を作りはじめました。
ぐつぐつ。
陰干しされる肉。
外は太陽が強くて暑い! 子どもたちはテレビに夢中。
大人は車の日陰で。。。
修理中。自分でやるのがモンゴル人。
合間に次女が遊びにきたり、
長女が様子を見にきたり。
親が仕事をする光景を子どもたちはいつも見ていて、まさに大人の背中を見ながら育ち、いつのまにか自分もやるようになっていくのが素敵です。
猫と赤ちゃんはお昼寝。
タイヤのスペアを取りに行こうと15歳のミシェールが誘ってくれました。草原の冬の宿営地に小屋があり、そこに置いてあるとのことで、道なき草原を彼女が運転して連れて行ってくれました。街ではもちろん運転はしないそうです(笑)。
着いたのは、怪我をした馬を休ませるための場所。それなのに多くの馬が涼みに来ていたので、ミシェールが放牧に戻るように追い出していました。
ここにタイヤがありましたが、かなりすり減った中古品のようでした。
無事に終了しておやつの時間。
どこでも遊び場に。
夜は美味しいホルホグをいただきました。この家では韓国風のコチュジャンを加えてピリ辛味に!
ゲルから離れたところに1匹のヒツジが長い紐で地面につながれています。怪我をしているので仲間から離しておくそうです。
仲良しの兄弟。
夜7時半ごろ。日が傾きます。
最後の夜なので写真を撮ろうと皆を呼びました。
遊牧民の暮らしに混ぜてもらっていると、まるで別世界にいる気持ちになります。
私も一緒に。
髪を結んであげるヤンジカ。お母さんは忙しい!
ナーダムの前は村の手伝いで家をあける日もある男性たち。その間、大黒柱はお母さんです。
この夜トーギーの車でウランバートルへ帰る予定だったのですが、出発して1時間後、道中で故障して雲行きが怪しいのでゲルへトンボ帰り。翌朝ふたたび出発!
ナーダムの準備をするため、馬がいる場所へ寄ってダムカを置いていきました。
馬はいつものように放牧をさせますが、さらに栄養価の高い餌もあげるそうです。
こんなふうに餌を入れたバケツを馬の口にくくりつけて、全部食べるようにしていました。
嬉しかったのは、9年前に私を助けてくれた夫婦のお子さんに再会できたこと。右はダムカです。
9年前のふたり。今年は馬に乗ってナーダムに出場したそうです。次はいつ会えるかな。。。