モンゴルの「石炭泥棒」追求デモは11日目突入、錯綜する市民と政治家の思惑

12月4日からウランバートル市内にあるスフバータル広場で始まったデモは、11日目を迎えました。本日12月14日朝の時点で現地の気温はマイナス23度。この寒さの中、広場に寝泊まりするメンバーがいます。

画像は「TENGER TV」より

デモが長引くにつれて懸念されるのが、連日広場に居座るメンバーたちの体調。体調を崩した人もいるらしく、デモ参加者の要求がウランバートル市に受け入れられて広場にふたつのゲルが建てられました。

画像は「CITY OF NOMADS」より

デモ参加者や支持者は連日さまざまなアクションを起こしてデモを盛り上げようとしています。

例えばFacebookのプロフィール写真を真っ黒にするというのもその一つ。後述する俳優のツォグト氏が「この社会は暗い泥棒の巣窟。公正な社会を実現するため闘いたい人は、自分のプロフィール写真を黒くして平和な抗議への支持を示して!」と呼びかけたのです。

私がFaceookで繋がるモンゴル人たちも一斉に黒いプロフィール写真に変わったのですが、顔写真がないと誰が誰だかわからなくなって、すごく困りました(笑)。

 

さらにこの後ツォグト氏が、「泥棒のいない社会にしたいという願いを込めて、自分のプロフィール写真をモンゴル国旗にしよう!」と再びFacebookで呼びかけました。それに対して「結局どっちにすればいいの!?」とプロフィール写真の左半分を黒色に、右半分を国旗に変えた人も(笑)。

広場でも一般市民が色々なパフォーマンスを行なっています。昨日はある若い妊娠中の母親が政府庁舎前で薄着になり立ち続けるという抗議パフォーマンスを行い、周囲をハラハラさせました。

下の写真は「市民は手を汚して頑張って働いている」と訴える青年たちのパフォーマンス。

この写真に写っている若者ハグワドルジ氏は、深夜の広場から「凍える中みんな地面に寝ているんだ! ゲルを建てさせて!」と訴えるなど、活発にライブ発信しています。

デモ開始11日目、お母さんが会いに来てくれたそうです。20代に突入したばかりだという彼は毎日気丈に振る舞っていますが、母親の前で見せたこの表情から、プレッシャーや孤独感を抱えて闘っていることがなんとなく伝わります。この写真はFacebook上で一気に拡散されました。

デモが長期化するにつれ、彼のように市民の代表となってデモを引っ張ろうとする人が登場してきています。その最たる存在が俳優のツォグト氏。デモ開始当初から広場へ通い、拡声器を握って政府へ訴えたり、Facebookで毎日朝と晩にライブ配信をして人々にデモ支持と参加を呼びかけています。

彼の知名度について複数のモンゴル人に聞いたところ、「存在を知らない」と言う人もいれば「彼の名前は知られているよ。お笑い芸人みたいなことをする時もあればドラマに出ることもある」と言う人も。今回のデモで一躍超有名人になった彼のライブ配信を覗くと、「未来の子ども達のために今我々が闘うしかないんだ!」「自分には小さな子どももいるし怖い気持ちもあるよ……でも、でも、やるしかない!」と怒ったり涙ぐんだりしながら、感情露わに語りかけています(エモーショナルなので、見ていると結構ぐったりします)。

応援の声が多くある一方、「俳優なのになぜデモをリードする?」「誰かから資金援助をされて活動しているだろう」などと批判する人もたくさんいます。彼の家族が嫌がらせを受けたりもしたようです。

12月12日の夜に行われたツォグト氏のライブ配信に、デモ参加者の一般市民ガンオチル氏がゲストで出演。生配信の中で、ガンオチル氏が政治家の電話の音源を公開したり、ガンオチル氏自身の銀行口座を公開したり(政府関係者から違法行為を隠遁するために9兆トゥグルグが送金されたという話)、爆弾的暴露が次々行われました。

視聴者からは「嘘でしょう? 私は今何かの映画を見せられているの?」「この国は恐ろしすぎる」「ツォグトもガンオチルもご家族も身の安全をとにかく守って! 勇気あるあなた達を私は応援し続ける!」などのコメントが殺到していました。なぜ市民のガンオチル氏がそのような機密情報を持っているのか、それらは真実なのかはもちろんわかりません。この翌日、この暴露の内容を否定する記事が早速出ました。

そもそもモンゴルに石炭泥棒がいるという話を最初に出したのも、被害額が40兆トゥグリグという膨大な額であることを公開したのも、一部の政治家でした。政治に関わりのあるモンゴル人の話によれば、「与党人民党内で勢力争いがあり、このような情報が表に出た。金額の大きさのインパクトに加え、前から国民を悩ませていたインフレや失業率の問題などが重なり、このような長期デモに発展している」。

「カラー革命を起こしたい海外勢力が、このデモに資金提供しているのでは」という疑惑の声も上がっています。内閣を辞任に追い込んで腐敗をもみ消そうとする人や、国会を解散して憲法改正を試みようとする人もいたりして、デモの表と裏で色々な思惑が絡み合っているようです。

日本在住でデモを支持するモンゴル人たちも、地域ごとに集まってFaceookで発信。

東京在住のモンゴル人は渋谷にあるモンゴル大使館へ。

前橋在住のモンゴル人。

北海道在住のモンゴル人。

画像は「gogo」より

12月13日、石炭泥棒に直接的あるいは間接的に関与したとされる政治関係者など17人が公開されました。バトトルガ元大統領の名前もあるのが興味深いです。絶対的権力者に見える元大統領は今後どうなるでしょうか。この中で名前があがったマンダフバヤル氏は、すぐさま「私は無関係です」と否定コメントを発信しました。

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