11歳の遊牧民少年が出演する短編ドキュメンタリーが、モンゴルで話題になっています。YouTubeで無料公開されているのですが、ここに埋め込みができないので、ご興味があれば「BEKHI баримтат кино」と検索して探してみてください。
ドキュメンタリーのあらすじはこうです。
モンゴルの素晴らしさを探す旅をしていた2人のモンゴル人ジャーナリストは、ゴビ地方でひとつのゲルを見つけました。暮らしていたのはベヒという名前の少年。彼はなんと、そのゲルにたった1人で生活していました。
実際にはお兄さんも一緒に暮らしているのですが、放牧した馬の群れを探しに出かけたきり、何日も帰ってきていませんでした。お父さんとお母さんは25km離れたところに住んでいるとのこと。お母さんはFacebookを使うけれど、ベヒ少年は携帯も持っていないしFacebookもほとんどわからないそうです。
映像の冒頭で、男性2人と少年がゲルの床に座って談笑する場面があります。11歳のベヒ君は笑顔こそあどけないですが、大人2人と対等に向き合って、”家の主”という感じの堂々とした雰囲気を出しています。蒔を割る、水を汲む、カマドで火をおこす、料理を作る、食器を洗う、家畜のケガを治療する、みんな自分でこなしているのです。
いまここにいる家畜は馬2頭、犬3匹、羊とヤギ700匹ほど。どうやら前の晩、ゲルから100メートルくらい離れたところで眠っていた羊の群れが狼に襲われ、1匹食べられてしまったらしい(ベヒ君が血の痕を発見)。大切な家畜を狼から守ることは、遊牧民にとって超重要な仕事です。
2人の男性は別れ際、少年に高性能の懐中電灯をプレゼントしました。これで強力な光を照らせば狼が恐れて近寄ってこないよ、と。ベヒ君は「気に入りました」と喜びました。今回の映像は、バイバイと別れるところで終わります。
気になるのは、なぜベヒ君が親と離れて暮らしているのか? 理由については映像のなかで語られないためモヤモヤしますが、きっといまもゴビの大地でこの力強い少年が生きていることを思うと勇気がわいてきます。
追記(2022年2月8日):この映像を製作したジャーナリストたちに、ベヒ少年についての質問(学校は? 親はどうしているの?etc.)が殺到したそうです。そこでジャーナリストたちは近々再びゴビへ向かい、エピソード2を撮影するとのことです。