Mongolian Economy(2016年11月発行)に掲載
新内閣発足から約100日後にあたる2016年10月12〜15日、新首相エルデネバト氏は初の外遊先として日本を訪れました。10月13日に東京で開催されたモンゴル貿易投資フォーラム(日本貿易振興機構(JETRO)主催)では、モンゴルから参加した経済閣僚や企業幹部など約70名と、日本から参加した約200名を前にスピーチを行ない、「モンゴルは中国・ロシアと良い関係を築いている。そして日本は第3の隣国として経済的に重要な国。様々な面で協力し共に仕事したい」と話しました。
メッセージは主に3点。
1点目はモンゴルへの投資の呼びかけで、モンゴル政府が外国人投資家のための投資環境を整える努力をしていくことを強調しました。かつてモンゴルが社会主義から民主主義へ移行していった困難な時期、最大支援国の日本が262百万ドルを投資したことを持ち出し、「モンゴルのマクロ経済を安定させるためには日本の投資が必要」と述べました。
2点目、2016年6月に発効されたEPA(モンゴルにとっては初)により、日本・モンゴル間の貿易量が拡大することに期待を示しました。「モンゴルから鉱物資源と農牧業の産物を日本へもっと輸出したい。そして日本から最先端技術を取り入れることでモンゴルの製造業を発展させ、より付加価値のある製品を多く輸出できるようにしていきたい」
3点目、両国が有益かつ長期安定的な提携をしていくことを切望しました。「政治のみならず、民間企業や組織同士でも積極的に提携していきたい。2015年には、トヨタ・スズキ・日産・ブリジストン代理店のUB進出のように、日本から550を越える企業がモンゴルに進出した。日本とモンゴルの関係が駿馬のように速く駆け、雨上がりの虹のように光輝くように」
続いてバトムンフ外務副大臣が登壇し、「(EPA発効前の両国の貿易総額は年間平均3〜4億米ドルだが)EPA発効後はそれが50〜60%増加する可能性がある」と試算しました。
エルデムビレグ・モンゴル銀行筆頭副総裁は、海外からの直接投資が2011年4620百万ドル(GDP比46%)から2015年は110百万ドル(GDP比1%)に減ったデータを示し、経済的困難の打開策としての「4カ年の経済安定化計画(ESP)」を説明しました。
聴衆の関心を強く集めたのは、クリーン・エナジー・アジアのCEOガンホヤグ氏による再生可能エネルギーの話題。
同社がゴビに確保する土地は、東京の面積より広い2562㎢。この広大な土地で、風力と太陽光の計測実験を進めています。同社が携わる「アジアスーパーグリッド構想」は、ゴビ砂漠で風力と太陽光により発電した電力をグリッドでアジア各国へ送電するプロジェクト。現段階では日本・モンゴル・中国・韓国・ロシアが関係しています。これは日本のソフトバンクグループCEOの孫正義氏が、2011年の福島第一原子力発電所事故後に発案したものです。
超巨大計画のためなかなか大きな進展は見られませんでしたが、2017年にTsetii(チチ)で 50MW風力発電所が運転開始する予定。JICAとEBRDによるドル建て協調融資のプロジェクトです。2016年3月、ソフトバンクグループ、国家電網公司、韓国電力公社(KEPCO)、ロシアの送電網会社(ROSSETI)が、北東アジアのインフラの可能性調査を行うための覚書に調印。モンゴル政府も電力輸出を全面的にサポートする姿勢で、Newcomなどモンゴルの民間企業が実務面を請け負っています。
10月14日には、エルデネバト首相と安倍晋三首相の会談がありました。両首相は、EPAを着実に実施して両国が経済関係を強固にすること、北朝鮮の核実験や弾道ミサイル発射に対して国連安全保障理事会で新たな制裁措置を含む決議採択を目指すこと、そして拉致問題を解決するために両国が連携することを約束しました。
さらにエルデネバト首相は来日中、日本経済新聞に対し「財政赤字を現在のGDP比18%から2017年には9%に抑えたい。10月中にIMF調査団を受け入れて具体的支援について協議したい。前回2009年のIMF支援時と同じく、日本にも円借款を期待している。海外投資家の信頼回復を急ぐために首相管轄の苦情窓口を新設することを考えている」と語りました。