サハ共和国のポストロックバンド Elements of Dust がもたらす北極圏の風

先日ウランバートルでライブをしていた4人組のポストロックバンドElements of Dust(エレメンツ・オブ・ダスト)が、六本木でライブをするというので、友人に誘われて行ってきました。彼らの出身地は、極東ロシアのサハ共和国。モンゴルよりはるか北にある極寒地です。

1時間にわたる演奏は、モンゴルや世界でカリスマ的人気を誇る日本のポストロックバンドMONOを彷彿とさせる音色でした。インストゥルメンタルで歌詞はなく、哀しみ、静寂、慟哭、希望といった感情がわいてきます。観客である私たちはその音にすっぽり包まれ、体をゆらし、没入する感覚に。曲の節々から、マイナス50度の北極圏の空気を感じられるのが不思議でした。

会場は中華系のライブハウス。

モンゴルのラッパーKAとも遭遇。彼の同級生が、このバンドのツアーをマネジメントしています。

他のモンゴルの友人たちも来ていたので、観客は主にモンゴル人なのかなと思いました。

ところが、バーカウンターで私が飲み物を待っていたとき。前に並んでいたモンゴル人らしきグループの頼んだ飲み物が間違っていたようで、彼らが注文し直すと、日本人のバーテンダーが「そっか!」と一言。すると、そのグループの若者たちが一瞬驚いた顔をして、くすくす笑ったのです。

この場面を目撃して、彼らがアジア系のロシア人だとわかりました。ロシア語で「そっか(сука)」は、強烈に下品なスラングで、「メス犬、ビッチ」のような女性を罵倒する非常に悪い意味があります(絶対に使ったらダメとモンゴルの友人から言われました)。

逆のパターンで、モンゴルで「バカ(Бага)」という言葉を初めて聞いたとき、私はぎょっとしました。意味は「小さい、幼い」などで、よく使います。

ちなみに「そっか」の一言に驚いた若者たちは、万博を見るために日本旅行をしている最中とのこと。たまたまElements of Dustのライブ情報を知り、東京で故郷のバンドを見られるなんて!と感激して駆けつけたそうです。

会場で知り合った、在日ロシア人(サハ共和国出身)の女の子たち。日本に暮らすサハ共和国のコミュニティー(50人ぐらい)があるそうです。

頭にキラキラしたヘアバンドをつけている女の子をちらほら見かけました。

素晴らしいドラムを聴かせてくれたアーサー・バガリソフさん。民族っぽい衣装も気になります。

お客さんの数は多くなかったのですが、来場者の満足度は高かった! 六本木で、ひそかにサハ共和国の花が咲いた夜でした。