シャーマン増殖中

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<雑誌掲載記事の一部を掲載しています>

モンゴルに新型コロナウイルス感染者が少ない理由について、さまざまな都市伝説が生まれている。ウォッカに殺菌効果があるためだとか、馬乳酒が健康にいいからだとか……。

私が面白いと思ったのは、シャーマンたちの祈りがバリアとなり国を守っているという説。モンゴル人にとってシャーマニズムは身近な宗教で、病災や進路など人生の重大局面でシャーマンを頼ることが珍しくない。たとえば……。

私の親友の父親が膝を痛め、中国で手術を受けようと考えていた。しかしシャーマンから「今年は南の方角に凶の相が出ている。中国へ行くな」と言われ、あっさり手術を断念。膝の具合は悪くなる一方なのに、家族全員がこの決断に賛同していたので驚いた。

また別の話で、ウランバートル在住の女子学生が日本へ留学することが決まり、溺愛する飼い猫も一緒に連れて行く予定でいた。ところがシャーマンに尋ねたら、「その猫は日本で暮らすと死んでしまう」と告げられ、泣く泣くモンゴルに残すことにした。よく当たる人なので、言うことを聞かないわけにはいかないそうだ。

モンゴルのシャーマンは天や山を崇拝し自然信仰との関わりが深いが、都会にも存在する。日本のイタコやユタとちがって性別が限定されず、男性も女性もいる。

彼らは儀礼をおこなうとき、紐がすだれのように垂れさがった帽子とリボンがついた服を着て、太鼓を手に持つ。見るからに重くて暑そうな衣装だが、これが鎧となり、悪い影響から身を守ってくれるという。

昨夏、私は草原のゲルでシャーマンの儀礼に参加させてもらった。

年配の男性シャーマンが太鼓を叩いてうなり声をあげ、間もなくトランス状態に。彼の先祖霊が憑依したらしく、古い言葉で話すのを横にいる通訳者が現代の言葉に直して語る。シャーマンは途中でゲルを出て草原に立ち、星空の下で延々と太鼓を叩いていた。

私は目の前で儀礼を見たのが初めてで、正直かなり怖かった。おとなしく眺めているのが精一杯で、何を語っていたのかもよくわからなかった。

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⬇️全文(残り約1000文字)は月刊望星2020年6月号でご覧ください。