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肉と健康の革命

Mongolian Economy(2018年11月発行)に掲載

生まれ変わった“ハナマサ”

あなたがもし今30歳前後なら、子どもの頃の特別な日に「ハナマサ」焼肉レストランに行った思い出があるかもしれない。あの「ハナマサ」が、今年11月にリニューアルオープンした。しゃぶしゃぶのKAENと焼肉のM-1というふたつの新しい飲食店が入っている。

新生ハナマサ

2階にあるKAENを経営する横山信夫さんは、東京で原価Barというユニークなコンセプトの酒場を展開する実業家。いつか海外で挑戦したいとアジアの国々を旅し、成長する可能性を感じてモンゴルにKAENを開いた。KAENでは金額の異なる3種類の食べ放題コースを用意し、1日に100人を超す来店者があるという。「モンゴルの肉を日本の手法でカットし、口当たりが柔らかくなるよう工夫しています。日本から買ってきた日本酒や日本産ウイスキーもご用意しています」と横山さん。柔らかく美味しい肉が食べ放題なので女性客からも人気を集めている。

「KAEN」創業社の横山信夫さん(右から3人目)とスタッフのみなさん

ホリデーインホテルの隣に位置する「ハナマサ」が、最初にオープンしたのは1994年。日本で有名な肉のスーパーマーケット(肉のハナマサ)を創業した小野博さんが始めた。小野さんがモンゴルと出会ったきっかけは、1992年に日本政府から「ODAでモンゴルに建設した肉の加工工場が、民営化後どう運営されているか視察してきてほしい」と依頼を受けたためだった。

初めてUBを歩いたとき、小野さんは「なんて面白いところに来たのか。こんなに肉を多く食べる民族とはどんな人々なのだろう?」と強く関心を持った。そして「モンゴルハナマサ」をオープンしたら1000円食べ放題というシステムがうけて人気店となった。その後、日本の事業が多忙を極めたため小野さんはUBの店を閉じ、現在は知人の小野洋子さんがハナマサビルの所有者となっている。洋子さんは「新しいモンゴルハナマサが、日本とモンゴルの友好関係を促進する場所になってほしい」と話す。

なぜ肉を食べて健康になる?

人生を食肉に捧げてきた小野博さんは現在81歳。自身は飲食店経営から引退したが、アドバイザーとしてKAENとM-1を支えている。そして今、新たなプロジェクトを動かしている。テーマは「食べると健康になる肉」だ。

小野さんはいう。「人間は20歳を過ぎると、肉をエネルギーに変える力が減少します。そのため、肉を食べ過ぎると全て消化しきれず脂肪分が血液に入り、脳梗塞や心臓病や糖尿病などの病気を招く。しかしコエンザイムQ10、Lカルニチン、Rαリポ酸という成分を肉と一緒に摂取すると、消化能力を高めることができる。これは株式会社シクロケム代表取締役の寺尾啓二さんがドイツのワッカー社と長年研究して発見したことで、寺尾さんはこの成分を「ヒトケミカル」と名付けました。人間を健康にするために必要な第8の栄養素です」。小野さんは寺尾さんとモンゴル国立大ジャブザン・バトフー教授とモノス社と共に、モンゴル&日本から世界の食肉消費国へ向けてヒトケミカルの存在をこれから発信するという。

「肉のハナマサ」「モンゴルハナマサ」創業者の小野博さん

モンゴルブランドの牛を作る

小野博さんは“モンゴルブランド牛”の育成プロジェクトにも関わっている。スイス産の名牛シーメンタールが現在UB郊外で飼育されており、その飼育法を指導している。「世界の食用牛のうち90%は牧草で育てられ、残り10%(日本、北米、オーストラリア)の牛は穀物で育てられています。しかしこのプロジェクトでは両者の良いところを取り入れ、生後13〜15ヶ月はモンゴルの草原で放牧して、その後は大麦やとうもろこしなど穀物を与えているんです。モンゴルの草原は牛を育てるのに素晴らしい環境です」と小野さんはいう。

なぜ素晴らしいのか? バトフー教授によれば、「モンゴルの草原には3200種の植物が自生している。そのうち1200種を五畜が餌として食べていて、中には薬草も多く含まれている。さらに、五畜が食べる植物のいくつかには抗酸化成分が多く含まれていることが、東北医科薬科大学とモンゴル国立大学の共同研究で明らかになっています」。豊かな草原で生きる牛は、良い草を自分で選んで食べているのだ。

牧草がまばらに生えているのも良い点だという。なぜなら牛が草を探してよく動き回るので筋肉が多くつく。するとクレアチリンという成分が増える。クレアチリンはビーフエキスのもとであり、人間が食べると筋力が増加したり瞬発力が高まる。「牧草だけで育った牛は口当たりが固くなるのですが、成長途中で穀物を食べさせることで、クレアチリンを豊富に含み、かつ柔らかい牛ができるんです」と小野さん。モンゴルブランド牛が誕生したら、将来的にはKAENやM-1でも提供したいという。

ところで、スイス産の牛をモンゴルで育てたらスイスブランド牛ではないのか? 小野さんに尋ねると「モンゴルで育てるのでモンゴルブランド牛です。日本の“和牛”も外国の牛の血が相当入り込んでいますが、日本で改良していって世界に愛されるブランドになったんです」

和牛は肉の格付け制度で最高レベルのA5を獲得している。厳しい基準をクリアしているからブランドなのだ。日本では肉をA5からC1までの15段階で評価するが、小野博さんはこの格付け制度の基準を作った人物でもある。「モンゴルは社会主義時代に肉の評価制度がありましたが今はありません。ですから私は現在モンゴルの農林水産省やモンゴル国立大学と話し合い、モンゴルでも格付け制度の基準を作ろうとしています」と小野さん。モンゴルの肉が世界から信頼されるためには、信頼できる格付け制度が必要というわけだ。

「モンゴルの国民は肉のプロフェッショナルであり、モンゴル草原で自由に育った肉は味わうほどにその良さがわかる」と小野さん。彼自身が肉を愛し、人々が長寿で健康でいられることを願っており、その情熱が「食べると健康になる肉」のプロジェクトの原動力となっている。

AIエンジニア500人育成「蒙古班プロジェクト」

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