マイナス40度の銀河鉄道

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<記事の一部を掲載しています>

 この列車はいま、銀河ステーションを出て、本当に冬の宇宙を駆け抜けているのかもしれない。私は寝台車に寝ころがり窓越しの夜空を眺めながら、そう思わずにいられなかった。眠るのが惜しくて目をじっとひらいていると、漆黒の闇に真っ白い星粒が砂のように散らばり、その奥へ列車がすいこまれていく……。

 1月1日朝5時55分、ウランバートルの鉄道駅から臨時列車が発車する。この通称「初日の出列車」に乗るため、ダウンと防寒ブーツとニット帽で完全防備して出かけた。

 緯度でいうとモンゴルは北海道のやや北に位置し、寒さと乾燥が厳しい。冬はマイナス40度まで下がることもあるが、ウランバートル市内の建物はセントラルヒーティングのおかげでぽかぽか快適だ。草原のゲルでさえ、サウナのように暖かいのだから驚く。

 12月25日を過ぎても、モンゴルのレストランやホテルはクリスマスの飾りだらけ。社会主義時代からの習慣で、12月31日がクリスマスイブということになっているのだ。

 だから大晦日にスフバータル広場へ行くと、サンタクロースの格好をしたおじいさんが何人もうろうろしている。それぞれ水色、ピンク色、白色、緑色など色とりどりのサンタ衣装を身につけ、杖を持っている。わたしが広場を歩いているとピンク色のサンタが近づいてきて、「一緒に写真を撮っていいよ」と言う。喜んで何枚か撮らせてもらったら、すかさず「写真1枚1ドル」と請求してきたので逃げた。財布を持っていなかったのだ。

 さて元旦の早朝、まだ暗いうちにわたしはウランバートル駅へ到着した。すでにホームで待機していた列車は、真夜中の極寒の空気でキンキンに冷えて光り、巨大な車体がいかにもロシア式という感じで迫力があった。シベリア鉄道の支線なのである。

 列車のそばでは乗務員の女性たちが、銀河鉄道九九九のメーテルを彷彿とさせる紺色の帽子と詰襟ワンピース姿で立ち話をしていた。黒いサングラスと赤い口紅もつけていて、メーテルよりだいぶファンキーに見える。彼女たちが口をひらくたび、凍った息がぱっと立ちのぼった。

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⬇️全文(残り約1000文字)は月刊望星2020年2月号でご覧ください。

東海教育研究所 http://www.tokaiedu.co.jp/bosei/koudoku.html