トクトーイ!(酔っぱらいの話)

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<記事の一部を掲載しています>

 首都ウランバートルに滞在するなら、大通り沿いのホテルより普通の住宅街にあるアパートのほうが面白い。深夜2時頃になると裏通りから酔っぱらいの叫び声が聴こえてくるので、夜ふかしして窓の下をこっそりウォッチングするのだ。

「君を愛してる!」と彼女を必死に追いかける男性と、その手を振り払いタクシーをつかまえようとする女性のカップル。仲間内で口論になったようで、殴り合いを始める男性グループ(こういう場合はしばらくすると警察官がやってきて仲裁に入り、やがてしんと静かになる)。カラオケ帰りで熱がさめないのか、輪になって肩を組み夜空に向かって合唱する若者たち(あまりにうるさかったので、アパートの上階から苦情代わりにペットボトルやバスタオルが降ってきた)。 

 私はモンゴルの友人たちとお酒を飲むのが大好きだ。みんなもともと陽気な性格だけれど、酔うとそれに拍車がかかって喜怒哀楽も2倍増しになる。穏やかな人も飲むうちに饒舌になり、血の中に潜んでいたチンギス・ハンが目覚めるかのよう。

 モンゴルの宴会では、まず乾杯のときにウォッカを小さなグラスに注ぐ。指でお酒をつまみ感謝の意味をこめて天と地へはじき飛ばしたら、全員でトクトーイ(乾杯)! 一気に飲み干し、空になったグラスを逆さにして頭に乗せる。ウォッカは40度前後あり、喉元がカッと燃える。

 友人たちによれば、中途半端に終わらずとことん酔いつぶれるまで飲むのがいいらしい。運転代行サービスが普及しているので、車で来た人でも大丈夫。電話 1本でレンタル運転手が来てくれる。

 この夏に草原を車で旅したときは、雨でずぶ濡れになって体が冷えたら「ウォッカが効く」と言われ、朝起きて車に乗ろうとしたら「今日は悪路が長く続くから出発前にウォッカを飲もう」と1杯勧められた。

 こんな感じで飲み続けるのだから、よほど酒が強い民族なのだろう。そう信じていたが、人類最初の下戸は2〜3万年前にモンゴル高原で誕生したという説を聞いて驚いた。アフリカで誕生した私たちの祖先は酒に強いN遺伝子のみを持っていたのに、1人のモンゴロイドに突然変異でアルコールを分解できないD遺伝子が生まれ、それがアジアを中心に世界中へ広がっていったとか。

 という話を知ったとしても、モンゴル人がたくさん飲むという事実は変わらない。

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⬇️全文(残り約1000文字)は月刊望星2019年12月号でご覧ください。

東海教育研究所 http://www.tokaiedu.co.jp/bosei/koudoku.html